photo by David Goehring
最近SNSや掲示板などで政治についての議論がとても盛り上がってますね。
私の入り浸ってる某掲示板でも、ニューストピックなどで政治の意見が違う人同士が激しくぶつかりあって、なんだか途中から口ゲンカのようになってしまって(´・ω・`)ショボーンとしてしまうことが良くあります・・。
このように政治的に意見が違う人同士はなぜすれ違ってしまうのでしょうか。また、両者が効果的に話し合いをする方法はないのでしょうか。スタンフォード大学の社会心理学者ロブ・ウィラー教授が、このことについて考察しています。以下はウィラー教授の語る「政治的議論をするときのコツ」です。
目次
政治的議論をするときのコツ!
基本的に、政敵を説き伏せて納得させる方法なんて存在しないと思った方がよいでしょう。人の政治的ポジションは強固でなかなか変わりにくいものなのです。
しかし、どうしても意見を受け入れてくれない頑なな相手の態度を「ほんの少しだけ考慮をしてもらえる」程度に変えさせることは可能です。
そのコツは、自分の価値観に基づいた言葉を、相手の価値観に沿った言葉に変換することです。
価値観が違う相手にメッセージは届かない!
我々はしばしば自分の価値観に基づいてメッセージを発します。自分の価値観のもとに説得力のあるメッセージを作り上げて、相手に向かってそれを語ります。しかし、そのメッセージは価値観が異なる相手にはまるで届かないのです。
ここで一つ例を見てみましょう。アメリカの銃規制についての典型的な議論です。
リベラル派の人は「アメリカは他の先進国に比べて銃犯罪が多い!」と統計データを示して銃の規制を訴えかけます。しかし、保守派の人はこう主張します。「悪人の犯罪行為を抑止するためには善良な人々が銃を手に取る必要があるのだ!」と。二人はこうして、お互いがまるで耳を貸さないメッセージをいつまでも応酬しあいます。
自分にとっては「説得力のある言葉」だと思っていても、反対意見の人にとってはピンとこない意見だったりするのです。人々はなかなかこのことに気づきません。
「保守派」と「リベラル派」の価値観の違い!
一般に、保守派の人は「権威の尊重・集団への忠誠・道徳的な潔白性」といった価値観を持っています。また、リベラル派の人は「平等・公正・弱者の保護」といった価値観をもっています。
この両者が相手陣営に説得的に語りかける方法、それは保守派の人はリベラル派の価値観に響くような言葉で語りかけ、リベラル派の人は保守派の価値観に響くような言葉で語りかけることです。
例えば、保守派の人が大規模な軍備拡張政策を支持したいときに、リベラル派の人に対して愛国心を訴えるのは間違いです。保守派の人は「恵まれない人々の平等のため」とか「貧困や差別をなくすため」とか、そういった理由を持ち出してこの政策を説明する必要があります。
このように、考え方や価値観の枠組みを入れ替えて物事を捕らえなおす手法を「リフレーミング」といいます。
リフレーミングを駆使して相手を説得せよ!
軍事に関することだけではなくて、同性婚の問題や国の公用語の問題についてもやり方は同じです。同性婚の議論で、リベラル派はよく次のようなメッセージを発します。
「同性カップルが結婚して、多くのアメリカ市民と同じように権利を享受することができる、これはとても公平なことではないか!」
しかし、保守派の人にはこの公平性の訴えかけが全く心に響きません。そういうときは、このように言い換えるといいでしょう。
「同性愛者だってしっかりと兵役に応じるし経済にだって貢献する愛国的アメリカ人のうちの一人だよ。彼らにもみんなと同じ権利を享受させてあげようじゃないか!」
微妙な違いですが、この言い替えによってリフレーミングの効果が働きます。この言葉遣いは保守派の人の愛国心や集団への忠誠心、社会的秩序の保護といった価値観に訴えかけるものがあります。
また、保守派の人が英語を公用語に採用することをリベラル派の人に訴えかけたいときは、次のように言うとよいでしょう。
「たしかに移民たちには英語を学んでもらう必要があるし苦労が増えるかもしれない。しかしその結果、より差別の少ない環境でより良い仕事に就くことができるようになる。これは彼らにとっても恩恵じゃないか!」
相互理解を深めて実りのある議論を!
上記のように、自分のメッセージをリフレーミングによって相手に響く言葉に言い替えることはなかなか簡単ではありません。相手がどういうことを考え、どういう価値観に共感するのか、よく理解しないといけないからです。しばしば我々は、反対意見を持つ相手が考えているモラルにあまりに鈍感で、「彼らには我々と異なる価値観がある」ということさえ忘れてしまっている人も多いのです。
当然、このリフレーミングの手法を悪用すると危険なことも起こります。極端な例を上げると、ナチスのような人種差別的な政策を支持するようなことにもつながりかねません。しかし、異なる派閥同士が議論しあう場面で、お互い合意できるより良い着地点を探すとき、このリフレーミングの手法は大変有効なのです。
まとめ
以上、ウィラー教授のお言葉でした。
「良い議論をするコツは相手の価値観に立って話をすること!」
こういうことは頭では分かっていてもなかなか忘れがちになってしまいますね。相手から譲歩的な態度を引き出すために、さらに両者が納得できるより良い合意点に達するために、こういう共感的な姿勢で話し合うことが必要なんですね。たいへん勉強になります。
最近話題の安保法案の議論にこの方式をあてはめると、どんな感じになるでしょうか・・。
保守派の人は「戦争を回避するためにこの法案が必要なんだ!」「東南アジアの国々を中国の海洋進出から保護する必要がある!」といった論理で話すとよいのでしょうか。
また、左派の人は「アメリカに追従していいなりになるだけの法案だ!」「法整備が不十分なまま派兵すると自衛官を危険に晒してしまう!」といった感じでしょうか。
こういう意見はわりと発言されてはいると思いますが、なかなか相手を説き伏せるところまではいかないようですね。相手のハートを射抜くとっておきの一言を発するのは、なかなか難しいみたいです・・。
参考サイト・参考文献:
参考「How to argue better, according to science」
参考「From Gulf to Bridge:When Do Moral Arguments Facilitate Political Influence?」
Matthew Feinberg, Robb Willer, Society for Personality and Social Psychology(2015)