photo by Oleg Sidorenko
お母さんが赤ちゃんに語りかけるときの独特の口調ってありますよね。
優しくあやしかけるようなあの口調、「マザリーズ(motherese)」と呼ばれているらしいです。
とても興味深いですね。なぜお母さんはあのような言葉使いをするのでしょうか・・・?
ということで今回は「マザリーズ」についていろいろ調べてみました!
マザリーズとは
マザリーズとは、アメリカの言語学者「チャールズ・ファーガソン」さんの論文によって周知された言葉です。
母親が幼児に対して語りかけるときの言葉使い。学術的には「対乳児発話(IDS:Infant-Directed Speech)」や「対幼児発話(CDS:Child-Directed Speech)」とも呼ばれているそうです。日本語では「育児語」や「母親語」などと訳されています。
マザリーズは以下のような4つの特徴を持ちます。
- 声のトーンが高い
- 抑揚が誇張される
- ゆっくりとしたテンポで話す
- 同じ言葉を繰り返す
日本では「ねんねしようねー」とか「わんわんがないてるねー」とか、幼児語と一緒に話されることも多いそうです。
以下、実際にマザリーズが話されている様子です。
- 動画①「お母さん→赤ちゃんのマザリーズ」
- 動画②:「パパ→赤ちゃんのマザリーズ」
マザリーズはどんな人が使う?
マザリーズは、基本的に女性が乳幼児に対して語りかけるときに使われます。
でも女性だけなくて男性が使うこともあるし、乳幼児に対してだけではなくて、小さな動物やおじいさん・おばあさんに対して使われることもあるそうな。
基本的に、立場の弱いものや不自由なものに対して、相手の目線にたって共感的に語りかけるときに使われるようです。
老若男女・各国のいろんな文化圏でこのマザリーズの語りかけが見られるそうです。
マザリーズは人間が普遍的に持っている一つの習性としてとらえることができそうですね。
マザリーズの効果
マザリーズの語りかけは、赤ちゃんに対して以下のような効果があると言われています。
・情動調律の効果
赤ちゃんは、マザリーズの語りかけに対して通常の語りかけよりも積極的な注目を示すそうです。言葉の分からない赤ちゃんでも、抑揚が誇張されたマザリーズによって共感的に感情を理解することができるため、赤ちゃんの感情を育む情動調律の効果があると言われています。
・言葉の発達の効果
マザリーズのゆっくりとした口調や繰り返しを用いる表現は、赤ちゃんにとって理解しやすいものです。赤ちゃんは大人のマザリーズに耳を傾け、ときには一緒に声を出して真似しながら、言葉の学習を進めていくといわれています。
・社会的学習の助けの効果
マザリーズによって指示するものを赤ちゃんと大人が一緒に注目する「共同注視」という行動があることが知られています。マザリーズで赤ちゃんの注意を引き付け、一緒にものごとを観察することで、社会的な学習を促すことができます。
マザリーズがうまくできない人が増えている?
最近このマザリーズをうまく使えないお母さんが増えてきているそうです。
初めて赤ちゃんをもうけたときに「赤ちゃんにどう接したらいいのか分からない」「赤ちゃんをどうあやしたらいいのか分からない」と戸惑ってしまい、どこかぎこちない態度をとってしまう人が多いそうです。
この背景には、世の中の生活様式の変化に伴う、人間関係の変化がありそうです。
友達や先輩・後輩といった同年代の仲間との付き合いは多いけども、赤ちゃんと接した経験があまりない。こういう人は幼児に対して語りかけるためのコミュニケーション・チャンネルが身につかず、赤ちゃんや幼児とうまく接することができない、ということが起きやすいようです。
また、産後うつを患っているお母さんはマザリーズの語りかけが少なくなるという報告があります。「愛情をつかさどるホルモン」と呼ばれているオキシトシンの分泌が少ないお母さんも、マザリーズの発話量が少ないという報告があります。母親からのマザリーズの語りかけが少ない赤ちゃんは、母親との連合学習(出来事の関連性を学習すること)の効果が低下し、その代わりに父親や他の女性と連合学習の効果の方が高くなるそうです。
まとめ
マザリースは赤ちゃんにとって大切な意味がある言葉みたいですね。
これから核家族化や少子化が進んで、赤ちゃんとお母さん・お父さんの関係がますます緊密になり、重要になる世の中になっていくと思います。
マザリーズの語りかけを使って赤ちゃんが安心できる家庭を作ってあげたいですね。
参考サイト・参考文献:
参考「子どもの言語発達に合わせて親もマザリーズ(母親語)の脳内処理を変化」理化学研究所プレスリリース(2010年)
参考「0歳児におけるマザリーズの効果に関する一考察」名古屋女子大学,児玉珠美
参考「対乳児発話(マザリーズ)を処理する親の脳活動と経験変化」同志社大学,松田佳尚