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スロベニアの哲学者スラヴォイ・ジジェクが、フランス大統領選のマクロン勝利についてコメントを寄せています!
以下、ロシアのニュース紙「RT」の記事の翻訳です!
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フランス大統領選のマクロン勝利について、スロベニアの哲学者スラヴォイ・ジジェク氏はこう評しています。
「マクロンの勝利はルペンの恐怖からくるもの」
「マクロンとルペン、両者共に何もポジティブなビジョンなど持っていない」
「マクロンは現在ヨーロッパにおける最悪の事態に立たされている」
以下、ジジェク氏の言葉です。
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私は基本的にマクロンとルペン、どちらの候補者のビジョンにも共感しません。しかし、マクロンに反対票を投じた一部の人々に対しては、希望を持っています。彼らはリベラル陣営の脅しに屈しませんでした。「事態はますます深刻になっている!今すぐマクロンの元に集結せよ!」という脅しです。
今回のフランス人たちの気持ちを代弁するならば、きっとこうです。「我々はこんなゲームにはとても参加できない!ファシストの行う政治と、ファシストの芽を着々と育てる政治、どちらもだ!」
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「リベラル陣営の脅し」とは、例えばリベラシオン誌が用いた「Do whatever you want, but vote Macron.(好きなことをするがいい!でもマクロンには投票するんだ!)」という標語にも表れています。
この言葉が意味するものは、現在世界中で起きている出来事の本質をよく表しています。
「あなたが正しい選択さえすれば、完全な自由が与えられる!」ということです。この言葉により、近年我々のデモクラシーはますます意味を失い空虚になっていきます。人々に与えられた選択肢というのは、結局メディアが用意したものに過ぎないからです。
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私が最も問題だと感じるのは、マクロンとルペンのどちらも、フランスに対するポジティブなビジョンを持っていないということです。彼らは二人とも「恐怖」を煽る候補者なのです。
ルペンが煽る恐怖は明らかです。それは、移民に対する恐怖、諸外国に対する恐怖、国際経済に関する恐怖などです。一方、マクロンの煽る恐怖というのはなんでしょうか?それは「ルペン」そのものです。マクロンが勝利した理由は「反ルペン」であることという一点だけ、それ以外に彼には何もないのです。
深刻なことに、もはやヨーロッパのリーダーたちは何も適切にリードすることができなくなっているようです。これは早急に対処が必要な重大な問題であるといえます。
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この前哲学者のディディエ・エリボンがこう述べていました。
今回のマクロンへの投票は、四年後のルペンへの投票に繋がることでしょう。我々は現在大きな悪循環に巻き込まれ始めています。マクロンが行う政治はおそらく「現状の維持」です。そして現状の維持はルペンに大きな力を与えることになるのです。初めの選挙では、ひょっとしてルペンは勝てないかもしれません。しかし二回目、三回目の選挙でしだいに彼女は力を増していき、きっと最後に勝利することでしょう。