photo by Dane Low
みなさん、最近何かを信じたことはありますでしょうか・・?
わたしは近ごろすっかり人間不信気味になってしまっていて、なんだか心がささくれ立っております・・!
どのくらいささくれ立っているかというとですね、テレビを見ているときに「信じれば夢は叶う!」とか「想いはきっと届く!」とか「愛は地球を救う!」みたいなフレーズを耳にすると「ひぃッ・・」っとのけぞって反射的に電源を切ってしまうほどです・・!
「信じれば夢は叶う」とは、いったいどういうことなんでしょうか・・?「想いが必ず届く」なんて、ほんとにそんなことってあるんでしょうか・・?
人間不信状態マンと化しているわたしは、じっとりと考え込んでしまいました・・。
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ウィキペディアをちょっと調べてみたのですが、こういった「信じれば叶う」系の話ってけっこう世の中にたくさんあって、「ニューソート思想」などと呼ばれる1つのジャンルを形づくっているそうです。
「思考は現実化する」とか「ポジティブ・シンキングが成功をもたらす」とか「引き寄せの法則」みたいな、ああいう系のジャンルです。
この手の話のメカニズムは、基本的にこんな感じのことみたいです。
自分の頭の中で成功するイメージを繰り返し想像すると、自分に自信が持てたり、気持ちが大きくなれたり、積極的になれたりする。そうすると、いい感じに緊張感が抜けて高いパフォーマンスを発揮することができる。
アスリートとかがよく試合前に「馬鹿野郎お前俺はやるぞお前!うぉぉっ!」と気合をいれたりするのも、こういう心理的な効果を狙ってのことなんでしょうかね・・。
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心理学的な話は上記みたいな感じだと思うのですが、哲学的な話をするとどうなるのでしょうか・・?
わたしは、哲学者の柄谷行人さんのあの話を思い出します。それは「原爆と詰め将棋 」の話です。
柄谷さん曰く、20世紀半ば第二次大戦中の時代、各国がこぞって原子力爆弾の開発競争をしていたあの頃、アメリカが最優先で機密事項にしていたことは「原爆の開発に成功したこと」なのだそうです。
「原爆の開発に成功したことがバレると、他の国々も次々と開発に成功してしまう可能性がある・・」
原爆の製法はバレてなくても、「開発に成功したこと」がバレただけで、すでにアウトになってしまうというのです。
これはなぜかというと、「詰め将棋の問題」と同じことなのだそうです。基本的に詰め将棋の問題って、本番の対局で相手を詰ますよりもずっと簡単なんです。
詰め将棋には必ず「答え」があるので、「答えがあること」そのものをヒントにして、問題にのぞむことができるからなんです・・。
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柄谷さんは、この論法をググッと推し進めて、「科学技術がなぜ欧米圏で発達したのか」ということを考察します。
科学技術が主に欧米圏で発展を遂げたのは、彼らに人間の理性や合理性を重んじる信仰があったから。
「この世の全てを理性の光で照らし出すことができる!理性によって神のもとに到達することできる!」という強い信念があったからこそ、迷いなく科学技術の研究に邁進することができたんです。
一方、非欧米圏の人たちは「この世の全てを理性で計ることなんてできるのか・・?」みたいなほのかな疑念を抱いてしまったので、決め打ち・全ツッパ・一球入魂のパワーが出なくて、あまり良いパフォーマンスを発揮できなかったということです・・。
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わたしは「信じれば願いは叶う」というのも、きっとこれと同じ原理が働いてるんだと思うんですよね・・。
「わたしはわたしが成功することをすでに知っている・・」
なので、その「事実」を手掛かりして、逆算的に成すべきことを考えていけば、何も知らない人間なんかよりもずっと効率よく、実に論理的に「正しい答え」が見つかるはずなんです。
だってわたしが失敗する未来なんてあり得ないんですから、答えはすでに決まってるんですから。
これは当然の話なんです・・。